私が法人化しない3つの理由【法人化で後悔や失敗しないために】
更新日:2022年5月4日 筆者:鈴木俊雄(@smart_plan_ts、Facebook)
私が法人化しない3つの理由【法人化で後悔や失敗しないために】
要約
法人化には、デメリットもありますが、たくさんのメリットがあります。ですが、私は今のところ、個人事業主のままでよいと思っていて、法人化するつもりはありません。なぜでしょうか?この記事では、私が法人化しない理由をまとめてあります。
この記事は、
- 法人化しようか迷っている…
- 法人化で後悔や失敗をしたくない…
- 法人化のデメリットって?
- 法人化しない人の理由を知っておきたい
というような、お悩みや質問のある方向けて、少しでも参考になればとまとめたものです。
あなたが、この記事を読むことによって、個人事業主のままでいるか、法人化するか、を判断する参考になれば嬉しいです。
【 目次 】
私が法人化しない理由【個人事業主は孤独だがそれも良し】
私は、過去、法人経営を20年以上頑張ってきました。代表取締役ではありませんでしたが、取締役経営者として走り続けてきました。小さいながらも社員は30人以上にすることができました。
ですが、いろいろとあって(話すと朝までかかります)、今は会社を抜けて、ひとり個人事業主としてがんばっています。
なので、私は、法人も個人事業主も両方経験しています。だからこそ、もう法人化はもういいかな……と思ってしまう部分もあると思います。
なぜかというと、、、
一言で言えば、、、面倒で大変でストレスがすごいからです。。。
詳しくは、後ほど説明していきますが、その前に、簡単にですが、個人事業主と法人の違いを確認しておきましょう。
個人事業主と法人の違い
法人化すると、さまざまな制度やメリットの恩恵を受けられるようになります。なので、効率よく事業をまわしていくことを優先するのであれば、基本、法人にすべきです。
個人事業主と法人の制度の違いを簡単にまとめておくと下記のようになります。
個人事業主 | 法人 | |
事業開始時の手続きと費用 | 簡単/0円 | 複雑/数十万円以上(資本金要) |
税金 | 所得税等(上昇率が大きい) | 法人税(所得税より上昇率が緩い) |
経費 | 給与は経費にならない | 給与も経費になる |
赤字繰り越し | 3年 | 10年 |
破産時の債務 | 残る場合あり | 消滅 |
失業給付 | 支給なし | 支給なし(例外あり) |
法人化した方がメリットが多いですよね。
ですが、もちろんデメリットもあります。
法人化のデメリット
代表的な法人化のデメリットは、以下のような点です。
- 事務的な負担が増える
- 従業員管理の負担が増える
- 社会保険や労働保険の負担が発生
デメリットをざっくり言うと、とにかく色々な負担(雑務や精神的な負担)が、個人事業主よりも格段に増えるということです。
法人化に関する制度やメリットやデメリットについては、私が語るよりも、もっと詳しい専門家の方が数多くいるので、そういう方の記事を参考にした方が確かです。
ちなみに先の表やデメリットについては、以下の記事を参考にしました。
➡︎ 個人事業主と法人の違いは?10項目で比較したそれぞれの特徴と事業開始時の選び方
➡︎ 破産法とは?法人破産と個人の破産の違いやメリット・デメリットを解説
➡︎ 失業給付をもらえる条件を教えてください。取締役でも退職するともらえますか?
➡︎ 「法人成り」6つのメリットと4つのデメリット、簡単に行う方法とは
このように、法人には、さまざまな制度上のメリットがあります。コロナ関連の給付も個人事業主は軽く見られていた傾向がありましたよね。
さらに、お客様にもよりますが、法人ではないってだけで信用してくれない人も中にはいます。会社経営をしてきた私から見れば、会社組織より個人の方がよっぽど信用できますが、現実は法人という看板の力が存在したりします。
このように、法人化すると、さまざまな制度に加えて、それ以外の部分についても、多くのメリットが得られるようになります。これは、法人化のデメリットがあるとしても非常に魅力的です。
それなのに、私が法人化しないという理由は何なのでしょうか?
私が法人化しない3つの理由
私が法人化しない具体的な理由は次の3つです。
- 対顧客サービスやマーケティングに集中したい
- 大きくしていくつもりが全くない
- 法人経営(組織運営)と比べたら個人事業主はストレスゼロ
理由1.対顧客サービスやマーケティングに集中したい
法人化すると、個人事業主と比べて、経営上の雑務が何倍にも増えます。社員などを雇ってしまったら、さらに何倍にも増えていきます。人が増えたら、管理業務も増えるので、その負担はとても大きなものになります。
安定するビジネスの仕組みを作って、雑務や管理も全て人を雇って任せ、悠々自適、社長業に集中するのであれば、特に大きな問題ではないかもしれません。
ですが、私は、自分で対顧客サービスを行なっていきたいと強く思っています。マーケティングも自分で行う必要があります(違うと思っている人が多いですがマーケティングは法人化したとしても経営者の仕事です)。私は、対顧客サービスとマーケティングに集中したいんですね。
雑務や管理が増えると、その集中は間違いなく大きく削がれます。それは目に見えています。すると、間違いなくサービスの質は落ちます。マーケティングも質が落ちます。集客力や売上も落ちます。
社員やスタッフを雇い質を落とさないようにするには、ルールと教育と統率が絶対に必要になってきます。そうなると、事業サービスの提供が仕事ではなく、会社の運営が仕事になっていきます。
また、当然、給与も払っていかなければなりません。社員に家族がいるならその生活も背負っていくことになります。すると、最悪、売上主義になっていきます(売上主義を嫌っていたとしても)。するとサービスの質は地に落ちていきます。そして、ストレスは想像を超えていきます。
これらを一度経験している私は、もういいかな、いや、もう絶対に嫌だな…という思いが強くあります。これが、私が、法人化しない理由の一つです。
理由2.大きくしていくつもりが全くない
事業を大きくしていきたいなら法人化は必須です。社員やスタッフを雇うのも必須です。雑務や管理が嫌だとか、自分でサービスを提供していきたいなんて言ってられません。
それに、仲間と共に目標に進んでいくことは大変でも楽しいものです。1人ではできないことも社員やスタッフと共であれば実現していくことができます。その中には1人では決して得られない大きな感動を得られる瞬間もあります。
ただ、それらを経験してきて分かったことは、その瞬間は1%にも満たないということです。あとの99%は苦しみです。でも、逆に言うとその1%さえあれば、残りの99%の苦しみも全て救われます(そのくらい大きな1%です)。
若い頃は勢いも野望もあったので、99%の苦しみも耐えられました。でも、99%の苦しみは、もういいかなって……。個人でもっと大きな売上や利益を上げていきたいとは今でも強く思っています。ですが、1人で抱えられないくらい事業を大きくしていくつもりは私にはありません。
これが、私が、法人化(組織化)しない2つ目の理由です。
理由3.法人経営(組織運営)と比べたら個人事業主はストレスゼロ
法人経営(組織)と比べたら個人事業主は圧倒的に孤独です。分業なども不可能なので、頭も身体も駆使することになります。オンオフのメリハリも無くなります(いっつもクライアントさんのことやマーケティングのことを考えるようになります)。孤独で忙しくて大変です。
ですが、個人なら、自分でコントロールできない外敵要因が少なくなります。全ては自分次第だからです。すごく嫌なお客さんは相手にしなくても済みます。助けたいクライアントさんに全力を注げます。自分の正義を貫けます。ストレスゼロです。
法人経営(組織運営)時代はストレス100でした。でも、今はストレスゼロです。もう私は戻れませんね。
これが、私が、法人化しない3つ目の理由です。
一人法人化(マイクロ法人化、ミニマム法人化)
なお、法人化したとしても、一人社長や一人親方で従業員ゼロという体制(マイクロ法人化、ミニマム法人化などと言われることもあります)でやっていくのであれば、同じことなので、ストレスゼロとなります。ですが、私の場合は、1つ目に述べた理由などもあるので法人化していません。
※マイクロ法人:株主と取締役が一人の小さな会社のことです。 家族運営のケースもあり、プライベートカンパニーとも呼ばれる。
法人化で後悔はしていません
法人化は後悔していますか?
もし、こういう質問をされたら、私は「1ミリも後悔していません」と答えます。今はもう法人化するつもりがありませんが、その昔、法人として会社を立ち上げたことは、失敗したとも思っていませんし、まったく後悔もしていません。
法人だったからこそ、仲間(社員)がいたからこそ、学べたことが山ほどあります。なので、感謝することはあっても、後悔を感じたことは全くありません。
後悔するしないを左右するのは、法人化がどうのこうの、個人事業主がどうのこうのではなく、覚悟を決めて取り組むか否か、要は覚悟の問題です。
法人化のメリットやデメリット、個人事業主のメリットやデメリットを十分すぎるくらい調べて、十分すぎるくらい検討して、十分すぎるくらい準備して法人化しても、覚悟がなければ、いずれ失敗しますし、後悔します。
あまりにも雑な計画で法人化をスタートするのはどうかと思いますが、重要なのは覚悟です。精神論っぽいことになっちゃっていますが、ここが本質的な重要ポイントだと思います。
個人事業主の法人化タイミング
個人事業主の法人化タイミングは、大きく言うと次の2つです。
- 規模を拡大していくと覚悟したタイミングで法人化
- 税率の損得を考慮したタイミングで法人化
規模を拡大していくと覚悟したタイミングで法人化
事業を拡大していくのであれば、その覚悟を決めた時が法人化するタイミングです。
法人化して、人材を増やして、集客を増やして、たくさん売って、多くの売上、多くの利益を出して、投資にまわして、さらに事業を進化させ…。
個人事業主では、できないことがあります。規模を拡大していくと覚悟したタイミングで法人化してください。
税率の損得を考慮したタイミングで法人化
個人事業主だと、ある一定の利益を超えると、法人化した方が税金を抑えることができます。
法人税の税率は、利益が800万円以下は15%、それ以上は23.2%です。
一方、個人事業主の所得税の税率は900万円を超えると5〜23%→33%〜45%となります。
なので、一般的には、個人事業主として利益が900万円くらいになったなら、法人化を検討するタイミングだと言えます(税率の損得のみを観点とする場合)。
注:法人が納める税金は法人税だけではありません。上記はあくまでの目安です。法人税以外の税金についても確認が必要です(参考:➡︎会社が納める税金一覧と納税方法まとめ)
個人事業主の孤独さに耐えられるか
個人事業主(法人化の一人社長も含む)でいこう!……と思った方にアドバイスです。
もう既に、あなたも感じているかもしれませんが、一人は自由でストレスはゼロですが、とにかく孤独です。孤独さは、たまに、こたえます。
でも、私の場合は、それもまた良しと思うようにしています。なぜなら、そのくらいの代償で、ストレスゼロが得られるのであれば、大した問題ではないからです(あくまでも私の場合はです)。
個人事業主の孤独を回避する方法
でも、どうしても孤独は無理というような方は、自分に合ったビジネスコミュニティなどに入れば良いかなと思います。私も一時期は起業した人が集まるコミュニティに入っていましたし、孤独感も薄れますよ。
あと、私の場合は、個人事業主として一番苦しい時に、コンサルタントさんに、コンサルティングもお願いしていました(一般的に100万ほどかかります)。このように相談できる相手がいると、孤独感も薄れます(もちろんビジネスも改善されます)。
お金もかかりますが、コミュニティに入ったり、コンサルタントさんと契約したりするのはとても良い方法です。お試しください。
法人化しない理由・する理由は人それぞれでOKです
法人化しない理由・する理由は人それぞれでOKです。この記事で言っていることは、あくまでも私の場合です。正解なんてありません。
「法人と個人事業主どっちが良いですかね?」
そんなことは人に聞かないでくださいね。どっちもどっちです。自分で覚悟して決めてください。
「法人と個人事業主は何が違いますか?」
なら、どんどん聞いて良いです。ですが、法人と個人事業主どちらが良いかを決めるのに、人の意見は聞かないでください。私の意見もです。
この記事では、私個人が、勝手に個人的な理由で、もう法人化しないと言っているだけです。その理由を述べたまでです。ご自身で覚悟をもって決めてください。
まとめ
法人化や組織化をしないと、得られないものは、たくさんあります。制度上のメリットや売上のことを言ってるのではありません。仲間、チーム、教育、統率、助け合い、大きな夢、etc。これらは、個人事業主では絶対に得られません。法人化・組織化も悪くはないです。
ただ、私は、、、もういいかな、、、というだけです。
あなたには、法人化しない重要な理由がありますか?
あるのなら、個人事業主のままでいきましょう。
ないのなら、法人化へ向けて検討してみましょう。
いずれにしても、あなたのビジネス、あなたの人生が、幸せなものになることを祈っています。